江南厚生病院 鈴木 航
1.へき地医療研修で楽しかったこと、思い出
最も印象に残っているのはへき地健診である。地域の集会所に医師や看護師が出向き、バイタルや採血を測定するものである。
そこで熱中症に関する講話をする機会をいただいた。
へき地の医療機関は、医療行為のみならずこうした保健、福祉の分野においても包括的な取り組みをしていることが分かった。
また今年度からの取り組みとして、自宅のみそ汁の塩分濃度の計測も行っており、足助病院が地域住民の一次予防を担っていることを実感した。
2.後輩研修医に是非伝えたいこと
足助病院の医療圏である、足助・旭・稲武地区は高齢化率が軒並み40%を超えており、介護力が低い傾向にある。
また山がちな地形のため高齢者でも車が手放せず、認知症ドライバーなどによる交通事故も問題になっている。
また昔ながらの家屋で、いまだに風呂とトイレが別棟である家庭も多い。
そうした地域が抱える問題に、病院にいる時はもちろん、近くの観光地や温泉にドライブするときでもよいので後輩自身の実感として気付いてもらいたい。
3.へき地医療(地域医療)に対する考え方の変化又は感想
「地域医療」は、その土地に住む人の現状やニーズを十分に知ることが不可欠であろう。
その点で私は2週間という短い実習期間では、完全に地域医療を「実践する」ということはできないと思った。
しかし、患者さんの生活そのものを聴取しようとする上級医の先生の診察や回診を通して、「地域医療」が求められているものの片鱗は理解できたような気がしている。
4.地域住民・患者さん・へき地で働く職員へのメッセージ
足助病院の今年度のスローガンは「自他を想う」である。
これは仏教の「自他一如」の精神からくると聞く。他人の痛みを自分の痛みとすることは、なかなか簡単なことではないだろう。
しかし、へき地医療の現場において、「いのち」の本当の在り方は急性期病院以上に求められるものであり、私も貴院で研修した医師として常に座右に記しておきたい言葉であると感じた。
貴院のスピリットでもある「想う医療」を、私の今後の診療の糧としていき、いずれ何らかの形で「地域」に貢献出来たらよいと思っている。