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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2021/03/03 

Vol.100  「地域の課題① ~訪問診療・看護~」

執筆 名誉院長 早川富博

1996年に足助病院に再赴任して新しく始めた仕事は訪問診察でした。

当時、在宅医療推進のために訪問看護・訪問診察が推奨されていました。
愛知県厚生連の病院でも逐次進んでおり、4月から足助でも訪問看護ステーションが開所されていました。
訪問看護には訪問診療がセットなので、当時の院長がすべてすると言われていましたが、お忙しいのでお手伝いすることになりました。
写真は24年前、小生も若々しいですね。
胃の手術を受ける前でした。

訪問診察で自宅にお伺いすると、普段の生活が垣間見えます。
写真でも解りますが、在宅療養してみえる方の主な介護者は、嫁、妻、娘が多く女性が8割方を占めていました。
1996年(平成8年)7月から2000年(平成12年)6月の4年間に足助訪問看護ステーションを利用された206例のうち、死亡された107例を対象に、在宅死の背景を病院死と比較検討しました。
在宅死は39例(36%)、病院死は68例(64%)、死亡時の平均年齢はそれぞれ87.1±9.5歳、82.2±9.8歳でありました。
在宅死の比率は経年的に増加し、平成12年は在宅死の比率が病院死を超えました。
在宅死群と病院死群の間に基礎疾患、男女差、住所(病院から利用者宅への距離)に関する偏りはありませんでした。

しかし、在宅死群では日常生活自立度の低い傾向と、主たる介護者以外の協力者が多い傾向が認められました。
また、在宅死群では疼痛や呼吸苦などの訴えのない人が有意に多かった。
在宅死か病院死かの生前の意志決定についてみると、在宅死群では明らかに本人によるものが多く69%を占めていました。

これらから、在宅死を規定する因子として、本人による意志表示、主な介護者以外の家族が在宅ターミナルケアに協力できること、および患者本人からの訴えが少ないこと、が重要であることが明らかとなりました。
家で最期を迎えることが出来た人々は幸せですね、と当時は考えていました。

つづく...
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