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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2021/12/01 

Vol.138  「対話 その① ~説明と納得~」

執筆 名誉院長 早川富博

今回から「対話」について考えます。

小生のしている日常診療の中で「対話」は常時行われています。
「医師による説明と患者さんの納得」です。
外来にて、患者さんが症状を訴えられれば、その診断もしくは原因を説明して、検査の必要性と処方内容をお伝えする。
それに対して疑問があればお答えして患者さんは納得・同意されます。
説明が一方通行であれば「対話」になりません。
時間が限られた普通の外来診療での会話は連絡でしょうか、対話とは言えませんね。

説明とそれに対する納得・同意は、まさに対話になります。
治療のために入院された時は、時間をかけて説明し、そして同意が得られるようになります。

しかし「説明」をしても、その先にある「納得」を得ることは難しいことが多いと感じてます。
説明する人(医師)と受け取る人(患者さん)の間に、基礎知識の隔たりがあるので、十分な理解と納得を得るためには長時間の解説が必要になります。

例えば、胸部レントゲン写真を撮影して、その結果を説明します。
小生「異常所見はないですね。」
患者さん「この左に写っている白い影は何ですか?」
小生「これは心臓の影です。」
患者さん「心臓の下の黒いところは?」
小生「胃の中の空気が写っているのですよ。空気は黒く映ります。」
患者さん「白い薄い影が左右にありますよね?」
小生「これはあなたの乳房の影が見えているのです。」
患者さん「ふーん」

このように説明をしだすと、解剖、レントゲンの写り方の特性などを話さねばなりません。
医学部の講義になってしまします。
時間がいくらあっても足りません。
これは少しオーバーな話ですが、「説明と納得・同意」には限界があるということです。
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