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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2021/12/08 

Vol.139  「対話 その② ~説明と納得・続~」

執筆 名誉院長 早川富博

前回は、対話の一つである、医師と患者さんとの間に必要な「説明と納得・同意」には、限界があるということを書きました。

しかし、大事な治療方法の決定には、十分な説明を受けて、それに基づく自己決定が必須です。
自分の体のことですから「自己決定権」が侵害されてはなりません。
医師からの説明不足は「自己決定権」が実行できない状態になりますので、医療訴訟では、このことが肝になります。

ここで問題が生じます。
説明不足とは?
相手が納得されるに十分な説明とは?
治療結果が悪かった時には、後で聞いてなかった!という事態が生じることもあります。
それを避けるために、同意書なる書類がたくさん作られるようになりました。

しかし、書類があるから十分に理解納得されているとは言えません。
患者さんと医師の間には、当然、医療知識の差があります。
なんとなく理解したと思い同意書に署名されることが多いのでしょう。
十分な理解を得るためには、医師と同等の知識が必要ですから。

小生、昔は消化器疾患の専門医でしたが、がん治療の現場から離れて20年が経ちました。
よって最新のがん化学療法に関して自信がありません。
最新式の外科手術に関しても疎くなっています。
他科の疾患については一般患者さんの知識よりはありますが、とても専門的なアドバイスはできません。
一応、ネットで調べはしますが、ネット上の情報はたくさんありますが、何が正しいのかわかりません。
発信元が大学病院であれば信頼しますが、他は怪しいと思ってしまいます。

では、どうしたら?

最後は説明してくれる医師との信頼関係でしょうか。
説明される医師が信頼に足る人であれば、その中身は理解、信用されると思います。
病状・治療方法の説明の後、「先生だったらどうされますか?」と聞かれることがあります。
信頼されていると思い真摯な返答をいたします。

しかし自己決定は性急にすべきでないことも重要です(救急のように即決しなければならない時もありますが)。
家族間での同意の形成なども必要ですので、その間に疑問が生じれば、説明を再度求められることも大事です。
自己決定が変わることも当然あります。
病状の時期によっても変わりえます。
患者さんの「自己決定」には医師との対話が必須です。
究極の対話と言えます。
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