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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2022/07/27 

Vol.171  「小説 読書歴④」

執筆 名誉院長 早川富博

中国を題材にする作家に北方謙三氏がいます。
「水滸伝」「楊令伝」にハマりました。語り口が切れよく、氏の解釈で歴史事実とは異なる人物像となっているので、まったく新しい歴史小説となっています。
一方、北方氏は日本の歴史小説も南北朝時代を題材にしたものが多く、司馬遼太郎氏が取り上げなかった時代をわかりやすく書き上げたものが秀逸です。
日本の歴史でも鎌倉時代末期から南北朝時代、足利時代は複雑怪奇であり、歴史好きの小生にとってもとっつきにくい時代でしたが、北方氏の時代小説で胸にすとんと落ちました。
北畠顕家を書いた「破軍の星」、悪党たちを描いた「道誉なり」「悪党の裔」「楠木正成」などを読むと、本流から外れた亜流の人々の生きざまが描かれ、自分の人生とも重なり痛快に思って読みふけっていました。

歴史小説といえば、宗教上の人物を取り扱った小説も読むことが増えました。
我が家は浄土真宗であり、子供のころ夏休みにはお寺でお経のお務めがありました。
医師になってから丹羽文雄氏の「蓮如」を読み、「御文」の意味が分かった次第でした。
吉川英二の「親鸞」を中学時代に読んでいたのですが、蓮如は、教祖:親鸞の後、八代目の時代ですので真宗の中興の祖と言われています。
北陸を中心に布教活動を行い、全国にまたがる宗教としたのです。
実家も真宗・東本願寺ですので「それ人間の・・・」で始まる御文を覚えたものでした。この御文は蓮如が地方の信者に充てた手紙なのです。
子供のころにはわからなかったことが、還暦を過ぎるとその中身が少し理解できるようになりました。
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