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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2024/06/19 

Vol.269 「善良」

執筆 名誉院長 早川富博

前回は「傲慢」について書きました。
今回はその対照となる「善良」です。

「善良」な人とはどのような人を言うのでしょうか。
性質が穏やかで素直な人。
善良な市民とは、法律や社会のルールに従い、暴力的で問題を解決しない近代の模範的な市民のことです。
社会の中にあってルールを守り、法律を犯さず、従順なイメージです。
はたから見ると謙虚で善良な人。

しかし謙虚であっても人は自己愛があります。
自己愛がなければ自我が構築できません。
しかし自己愛が過ぎると傲慢になります。
自分は勉強もできなかったし、美人でもないと謙遜されて、一見、自分の自己評価が低く言われても、自己愛だけはやたら高い人がみえます。
善良そうに見えても傲慢さが少しあるように思います。

皆さん自分は善良な人であると思っています。
生きていく中で、人は常に判断を繰り返し、自分の色メガネで「相応しくない人だ」「嫌いだと」一方向から見て評価を下してしまうことが多々あります。
この時、自分の中に「傲慢」さが顔を出します。
しかし、なんとなく傲慢さを自覚しながら、善良でありたいと行動すれば、物事の見え方は変わってくるかもしれません。

そもそも傲慢=悪、善良=善とハッキリ分けられるものでもなくて、善良のなかに傲慢があったり、傲慢のなかに善良があったりして人間の心というのは割り切れないものだと改めて感じました。
悪か善かを区別することが差別につながりやすく、果ては戦争になるのですから。

好きか嫌いかも同じですね。
愛情があれば戦争になると。
善悪併せのむ、が人間の本質かもしれません。

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