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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2024/06/26 

Vol.270 「お薬」

執筆 名誉院長 早川富博

胃がんの手術後から、食後血糖上昇を抑えるために「セイブル」という内服薬を続けています。
胃全摘後のため食べ物が食道からすぐ小腸に入ります。
すぐに消化吸収が始まり、食後血糖値はグーンと上昇します。
それに伴いインスリンがすい臓から分泌されて急上昇します。

結果として食後2時間ぐらいに血糖が下がります。
いわゆるダンピング症候です。
普通の人は胃がありますので、食べ物は胃の中で攪拌されて、ゆっくりと十二指腸へ送られて消化吸収が始まります。

「セイブル」という薬は、砂糖(ショ糖)を分解してブドウ糖にする酵素(グルコシダーゼ)を阻害することによって、血糖上昇を抑える薬です。
でんぷん質や砂糖は、ブドウ糖にならないと小腸から吸収されないことが解っているから開発された薬です。
生理的なことが解って薬が開発されるのです。
良くできたお薬ですが、毎食前に服用しなければならないこと、おならが増えることなどの不便さがありました。

23年間服用してきたお薬ですが、さすがに毎食前服用は疲れます。
常に名刺入れや財布に携帯しているのですが、旅行などの時にとても不便です。
そこで1日1回で済むお薬に替えることにしました。

SGLT2阻害薬です。
今お薬は血糖が170㎎/dl以上になると、尿へ排泄するようにする薬です。
尿糖を増やす薬です。
糖尿病の人で食べ過ぎて血糖が上がる人にはもってこいの薬です。

発売当初、小生はこの薬の処方に反対でした。
なぜなら糖尿病の人こそ食事療法が必要なのに、食べ過ぎても尿に出すから大丈夫、体重も減りますよ、とんでもない薬だと思いました。
だから同じような薬が続けて発売されても、かたくなに処方をしませんでした。

しかし、糖尿病の患者さんで食事療法をきちんとできる人が少ないことがわかっているので、数年すると肥満傾向の患者さんに処方するようになりました。
その後、この薬が慢性腎臓病、心不全の予防効果があることが判明してきました。
この薬の利便性は1日1回で良いこと、食後血糖が200を超えない、ことです。
欠点は多尿になり、尿路感染が増えること、脱水になることです。

小生が試してみたところ、食後30分、1時間の血糖は188と140でした。まずまずでしょうか。
体重も1.5㎏減りました。
BMIが21とやややせ気味になりました。
排尿回数は増えたかどうか、まだ不明です。

夜間頻尿は年のせいか?
後日報告します。

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