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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2023/03/07 

Vol.230 「笑っていただく」

執筆 足助病院職員

企画課長兼施設課長 日比敦郎

先日、落語家の林家正蔵師匠の講演を拝聴する機会がありました。
講演の中で落語も御披露いただき、大変笑わせていただきましたが、講演の中でとても印象に残ったエピソードがあったのでご紹介させていただきます。

林家正蔵さん、私くらいの世代ですと「こぶ平」さんの方がポピュラーですね。
そのこぶ平さんが小学生のころのエピソードです。
こぶ平さんのお父様は初代林家三平さんです。(2代目の三平さんは笑点でも活躍されましたね)三平さんは早逝されたので、私は現役時代の三平さんを拝見したことがありませんが、手のひらを顔に当てて「あ゛~」と言うネタはテレビで何度か目にしました。
幼少期のこぶ平さんは、そのネタでからかわれることが多かったそうです。
もちろん多くの人々に愛されたネタなので、誇らしい気持ちもある反面、馬鹿にされるのが悔しくてたまらなかったそうです。
そんなある日、学校の先生が「立派な大人になるために大切なこと」をテーマに授業した中で「笑われるような大人になってはいけない」と言ったそうです。
そこでこぶ平さんは「ウチの親父は笑われてばっかりの仕事じゃないか!親父は落語家なんかやめちまえばいいんだ!」と泣きながらお母さんに言いました。
するとお母さんは今までにない厳しさでこぶ平さんを叱ったそうです。
「お父さんの仕事は笑われているわけではない。一生懸命練習した芸で笑っていただいているの。それであなたたちは生きているのよ!」
お母さんも泣いていたそうです。
「笑っていただく」とても心に刺さる言葉ですね。
笑いの多い楽しい講演でしたが、この時ばかりは感動して涙をこらえるのに必死でした。
こぶ平さんはその時はその言葉の意味が分からなかったそうです。
後になって、人に笑っていただくことの素晴らしさに気が付かれそうです。

実は講演の前に少しだけ正蔵さんとお話しすることができましたが、あれだけのお立場になってもとても気さくで優しい方でした。
病院も治療する場所だけでなく、どのような形でも「笑っていただく」場所として何かご提供できないものかと考えるとても良い機会でした。
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