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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2023/08/22 

Vol.254 「高校球児から学ぶ」

執筆 足助病院職員

企画室長兼事務管理室長 日比敦郎

今日はかなりマニアックな野球の話ですが、大切なことなのでしっかりコラムに表現したいと思います。お付き合いください。
令和5年8月13日(日)全国高校野球選手権大会2回戦、大垣日大VSおかやま山陽の試合について深掘りしていきます。

試合は白熱した投手戦で2-2のまま延長戦タイブレーク(ノーアウト1・2塁からスタート)に突入しました。
ちなみに、このタイブレークは圧倒的に後攻有利です。なぜなら心理的プレッシャーがまったく異なるからです。
先行の大垣日大は、点が取れないかもしれないと思うや否やなんとダブルスチールを仕掛け、これが相手捕手の悪送球を誘い、1点をもぎ取ります。このあたりはさすが名将阪口監督ですね。この悪送球まで読んでいたとのことなので、采配の恐ろしさを感じます。ただ、大垣日大はこの1点のみで攻撃を終えます。
一方、後攻のおかやま山陽ですが、2点取れば勝ちです。当たり前ですが1点も取れないと負けです。ノーアウト1・2塁ですので、(私が監督なら)100%送りバントの場面です。ワンアウト2・3塁のケースをどうしても作って、ワンヒットでサヨナラという究極のプレッシャーを相手にかけたいからです。
しかし守る側も必死です。何が何でも3塁に進めまいと極端なバントシフトを組みます。
ここで少しセオリーを申しますと、一般的に1・2塁の送りバントは最も難しいと言われます。その理由として、①一塁手が猛チャージをかけてくる②投手は投げた瞬間からマウンドを降りて三塁側にチャージをかける③3塁がフォースプレー(進塁してきたランナーより先にベースを踏むだけでアウトが成立する)であることが挙げられます。
従ってバントを成功させるには、➀3塁線に転がす②強めの打球で三塁手に捕球させることが必須でどちらかが欠けても成功率はかなり低くなってしまいます。もっと言えばこの時の打者は右打席でした。右バッターが三塁線に転がすためにはバットのヘッドを前方に出す必要があり、必然的に右腕を若干伸ばした状態になります。バットコントロールが困難になるので非常に難易度が上がります。
この攻守とも究極の状態でおかやま山陽のバッターは見事にお手本のようなバントを三塁線に転がします。ナイスバントです。これは決まったかと思った瞬間、実況のアナウンサーが信じられない一言を発します。

「サードもチャージ!」

私は耳を疑いました。三塁手もチャージするということは、二塁手が一塁ベースカバー、遊撃手が三塁ベースカバーに入るので、内野はがら空きになるということです。もしバスター(バントとみせかけて打つ作戦)に切り替えられたら、平凡な内野ゴロでも点が入ってしまいます。100%バント(私は100%バントの場面と申しましたが・・・)、しかも三塁線に転がしてくると決めつけないとできないシフトです。
結果は三塁手が打球を処理し、見事サードでフォースアウトにします。このプレー一つ取っても、流れるようにアウトにしていますが、三塁手が1・2塁のバント処理を捌いてサードフォースアウトにする場面を私は見たことがありませんでした。ただのバント処理と思われるかもしれませんが、このワンプレーのために大垣日大はかなり時間を割いて練習してきたことがよく分かるワンシーンでした。それをこの甲子園の舞台で難なくこなす大垣日大ナインにとても感動しました。

翻って自分のルーティンに落とし込んでみると、あるかどうかわからない業務に対してここまで準備できるかと思うとできていないことを痛切に反省させられます。あらゆる場面想定で、対処方法を考え、実行できるように練習(準備)することの重要さを高校球児から教わりました。このプレーから学んだ私は高校球児たちに対する感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。

さて、死に物狂いで進塁を阻止し、次のバッターもファウルフライに打ち取ってツーアウト1・2塁までこぎつけた大垣日大でした。ここで抑えきるかと思いましたが、そうはいきませんでした。次の打者は四球でツーアウト満塁となり、最後の打者に投じたボールが・・・
変化球のサインを出した捕手に対してストレートを投げた投手、しかもその投球が高めに浮く、弾く捕手、同点を確信して失意のもと(このあたりは私の勝手な推測です)本塁ベースカバーに向かう投手、一縷の望みをかけて本塁送球する捕手、ワンバウンドする送球、捕球できず内野を転々とするボール、生還するサヨナラの2塁ランナー・・・
サヨナラの瞬間、テレビ越しですが私は呆然としてしまいました。
ワイルドピッチ後の本塁ベースカバーでショートバウンドの送球を捌いてランナーにタッチする練習をしている高校はほとんどないと思います。
ミスを前提としたプレーの再現というのは中々難しいからです。
準備することの大切さを教えてくれた高校球児もまた、次の想定に向けてまた準備を始めていることでしょう。

「それでもなお・・・」

心に留めておきたいと思います。

※大垣日大のエース山田君は稲武の出身、センターの袴田君は私と同じ中学出身ということで、個人的に応援していました。彼らの今後の活躍を祈るばかりです。ありがとうございました。
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