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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2024/08/13 

Vol.308 「災害と向き合う その10」

執筆 足助病院職員

企画室長兼事務管理室長 日比敦郎

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支援活動も後半に入ります。
事前に医師会より指定のあった開業医さんの復興支援です。
午前中に石川県立看護大学のエキスパートナースからお褒めの言葉をいただき、調子に乗っていた私は午後も意気揚々と現場入りしました。
この開業医さんの建物には赤い張り紙がしてありました。つまり「危険」です。
基礎や柱に重大な損傷があり、次に揺れたら倒壊の恐れがあるということです。
いい気になっていた私はこの張り紙を見て急に緊張感が体の芯から沁みだして来るのを感じました。
活動自体は、院内の清掃と災害ごみの搬出です。チームメンバーの中ではまさに私の領域でした。
最初は恐怖を感じましたが、作業をしていくうちに倒壊のことは忘れ(忘れてはいけないのですが)メンバーとともに片付けを進めていきました。
聞けば、こちらの先生は診療不可能な状態から地域の患者さんのために診療再開に向けて動き始めたとのこと。
建物が使用不可の中、再び立ち上がろうとする不屈の精神に頭が下がる思いでした。
そんな先生のスピリットに逆に勇気付けられ、さらに片付けを進めようとしていた矢先、

「本日の予定分は終了しましたので、もう大丈夫ですよ。」
と言われました。
「まだまだ時間もありますので、おっしゃっていただければやりますよ!」
とお伝えしましたが、
「いえ、この先のプロセスの準備ができていないんです。これ以上はやってもらうことができないのです・・・」

いくら支援する側がやる気満々でも、受入体制が整っていなければ支援する意味がないどころかかえって負担になるケースもあるのです。
ましてや今回の先生はお一人で立ち上がろうとしていらっしゃいます。
それぞれのペースに合わせて適切な支援が必要なのだと学びました。現場に行かないと分からないことが本当に多いですね。
支援の限界とコーディネートの重要性を感じる活動でした。

活動が早く終了したため、現地の避難所の視察を兼ね、医療支援ニーズの確認のために輪島中学校へ向かいました。
比較的新しい、立派な建物であったので、建物自体はノーダメージでしたが運動場やテニスコートは完全に地割れしており、波打っている状態でした。
新旧2つある体育館は避難所として使用され、隣接する校舎では授業が行われていました。
ここでも全国から応援に来ている行政チームが交代で運営管理しており、私たちは大阪府の行政チームの方に説明をしていただきました。
医療支援の必要性はなさそうでした。逆に言えば応援チームの手により、しっかり運営されているということでした。
授業を終えた中学生たちがビブスを着用した私たちに向かって元気に挨拶してくれ、ここでも逆にパワーを貰ってしまいました。

そして輪島朝市の視察に向かいました。倒壊した家屋が当たり前の状態が続き、若干感覚が麻痺していましたが、そんな状況でも衝撃を受ける光景が待ち受けていました。


続く
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