MENU
green

足助病院コラム

Asuke Hospital column

2024/09/10 

Vol.312 「涙に暮れた夏 中編」

執筆 足助病院職員

企画室長兼事務管理室長 日比敦郎

最近、コラムが長編化傾向にありますね・・・
聖地甲子園で中京大中京と妻の母校である掛川西高校の試合を観戦していた私は、懸命な球児たちのプレーと甲子園の雰囲気に感動して涙が止まりませんでした。

第1試合、中京大中京と宮崎商業の試合は2対2の同点のまま終盤7回に突入します。
両者一歩も譲らず・・・というよりは、先制したものの追加点が奪えず宮崎商業に追いつかれた中京が苦戦、という試合前の素人展望通りの展開になっていました。
むしろエースが降板している中京の方が押されている感があります。
その流れの通り、宮崎商業が1点を奪い逆転となりました。
その裏の中京は初めて追う展開となります。ただ、甲子園に出た中京は強いです。すぐさま反撃です。
ここでアクシデントが起こります。ショート後方、センター前方にフラフラっと上がった打球をセンターが見送ってしまい、二塁打となってしまいます。その際、宮崎商業ショートの選手の両足が攣ってしまいます。
第1試合とはいえ、かなり暑くなってきていました。中京攻撃陣の強烈なゴロを右に左に受けながらアウトにしてきた疲労がここで出てしまいます。
私も経験がありますが、両足が攣ってしまうとどうにもなりません。プレー続行不可能です。
宮崎商業の顔とも言えるこの選手がベンチに下がるとなると、かなり厳しいな・・・と思っていたら、なんとベンチから治療を終えて戻ってきます。しかし明らかに足を引きずっています。とてもショートなんて無理なように思えました。
しかし、本人もここで自分が下がるわけにはいかないと思っていたのでしょう。強行出場です。
私は彼の意地とも取れるガッツに涙せずにはいられませんでした。強行出場に対して最近は選手生命がどうだとか、根性論なんて・・みたいな議論が盛んですが、はっきり言って無駄な議論だと思います。
彼の替えは効かないのですし、強行出場がチームとしての総意なのでしょう。そこに第三者が口を挟む余地などないと思います。
ランナーを三塁に置き、中京4番打者の打球は三遊間に転がります。決して緩い打球ではありませんが、これまでなら素早く追いついて捌いていた打球ですが、この時ばかりは追うことすらできていませんでした。

これをきっかけに中京が逆転、そのまま逃げ切り勝利を収めます。最終回に打席に立ったショートの選手は最後空振り三振でした。
恐らくその前のストレートを最後の力を振り絞って打った際にまた足が攣ったのでしょう。最後はボール気味の変化球についていけず力ない空振りでした。
足が攣る前の打席で強烈なヒットを放ったバッティングとは程遠い内容でしたが、最後まで戦った彼の姿は本当に見る者の胸を打つ素晴らしいものでした。

中京が勝利してとても嬉しかったのですが、宮崎商業の奮闘ぶりもまた素晴らしく、また場内の観客の皆さんも同じ思いだったようで、スタンディングオベーションが最後まで鳴りやまない素晴らしい雰囲気に包まれました。
そして第4試合に向けて英気を養いました。

続く

コラム一覧へ戻る