MENU
green

足助病院コラム

Asuke Hospital column

2019/11/12 

Vol.44  「とある手紙「しぶい青春」」

執筆 足助病院職員

薬剤部長兼診療協同部長 野村賢一

先日はお手紙ありがとうございます。
ユニークな岩本さんの文章と写真を拝読させていただきました。鳥取砂丘の砂浜でラクダに乗ってラッキョウをかじってビールを胃袋に流し込み酔ったところで空を見上げて月の砂漠の唄を歌う。こんな奇抜な妄想を神からの天命とおぼしめそれを敢行してしまうところが岩本さんのすごいところ。かつてからの岩本さんの最大の夢、それをことのほか瞬時に実現されたわけですので、すげぇーの一言、あっぱれでした。写真を見た瞬間に僕は仰天、大爆笑してしまいました。

僕は肥満防止と体力維持のためにランニングを昨年は年間で千七百キロ走りました。が、今年はそれよりももう少し距離を伸ばそうと新年早々一月に二百五十キロ走破しました。いい調子で好スタートが切れたと実感しておりました。
ところが、出足しは好調でしたがシーズン・イン・フィッシングとなりますと、ランニングをほっぽらかし海釣りに没頭してしまうのでランニングの方は頭打ちになってしまいます。それでもそんな状況下においても昨年に続き今年も豊田シティーマラソン大会に出場して体力測定をしてみようと考えています。

昨年のことです。十年ぶりに出場した豊田シティーマラソン(ずっと大会には出ていませんでした)では、岩本さんと同年とおっしゃる元安城西部ランナーズのお名前は忘れてしまいましたが、以前お会いしたランナーとスタートラインでばったり再会を果たしました。
過ぎし日僕もいろいろ大会に出場していて、その頃僕は安城スポーツマンクラブに所属していました。ライバルチームだった安城西部ランナーズとは安城駅伝大会でガチンコ勝負していました。そんな訳で彼は僕のことを覚えていて下さったのでしょうか。

二人のあいだには二十年以上の歳月が経過しているのに、記憶という架け橋でお互いの過去がつながると、あれっ、・・・、二人はことのほか清々しくもなつかしさを顔面にちらつかせ笑顔で視線をぶつけ合わせました。顔の輪郭は当時のままですが、頭髪は理想の姿から遥か彼方に遠のいており皴の数は増えています。時の流れにはあらがえずひとつひとつの細胞は劣化しており、永遠のからだをもって生きているのではなく、限りある生命の中を泳いでいるわけですので仕方ないことです。彼は普段、農業をしているとのことで豊田シティーマラソン大会を楽しみに安城市の泉町からのこのこと出て来たとおっしゃっていました。 

彼のランニングシャツには彼の年齢をしるした七十四という赤い数字が彼のやや曲がった背中の上で尊い帆を広げるようにしてはためいています。僕はその数字を見たとき、ランナーとしてのかつての燃える炎がいまだもって魂のごとく生き続けていることに感銘を受け身震いしました。

ひとはいくつになってもどこかにこだわるところがあれば、それが生命力の泉となり活力のみなもとになるのでしょう。岩本さんにおかれましてはあれこれ次々に放埓な思惑という、とげ、が芽吹くでしょうから、浮かんだ幻想を精魂込めて育成されましてまた僕の度肝を抜くお手紙としてご送付してください。お待ちしております。

健康第一で闘志第二で、しぶい青春、期待しております。
                               
コラム一覧へ戻る