診療協同部兼薬剤部長 野村賢一
平成31年3月29日、業務終了後、定年退職者3名の女性に対して大勢の職員が講義室に集まった。足助病院でご尽力された人たちへの恒例の卒業祝賀会である。
退職者のご挨拶の中での一言半句、仕草など、仕事上でのエピソードが披露されるたびに周りの人たちが大笑いする。定年退職者祝賀会は足助病院独特のアットホームな卒業式なのである。
人生100年時代と言われる昨今、老後がどんどん長くなってきている。60歳で定年になってもその先に40年もの時間が残されている。このことを戦争前後の平均寿命4~50年と比較すると人生を2回やれる、やることとなる。
人間は学校で学び、卒業してから社会に出て働き、それから定年、老後という大まかな流れに沿って生きている。しかし、100年も生きるようになると、この当たり前のリズムが通用しなくなる。60歳で定年退職してからもう一度新しい人生をスタートさせるくらいのMIRAIが出来てきたのである。
しかし、風貌・容姿はだんだん細胞が老化していくので保持できなくなる。だから僕はできるだけ自分の顔写真を撮らないように心掛けているし、鏡をみることも短時間で済ますことにしている。老けた自分の顔を確認した時、たまらなく気持ちが萎えることを知ってのことだ。
年齢は自分で決めればいい。自分はまだ若いと思っている人はいつまでもヤング。夢を持って新しいことに取り組んでいつまでも学び続けている人は若い。
脳科学者じゃないから医学的説明はできないけれど、結局、人間は脳が活発に動いていることが大事じゃないか、と思う。
定年後のMIRAIを充実させる一番のコツは頭を甘やかさないことだ。人間、考えなくなったら老ける一方だろう。そのために学ぶこと、探求すること、挑戦することをお勧めしたい。また人と比べないことだ。人生100年時代というのは人類未踏の世界でもあり、だからこそこうだという方程式がない。そういう長寿時代になってきたのだから、それなりの柔軟性が必要なのは当然である。
定年退職者の祝賀会の中で僕は、早川元院長(現名誉院長)がご挨拶の中で年下となる3名の女性退職者に向け「お母さん、ありがとうございました。年齢は僕の方がずっと上ですが、気持ちはいつも若くしていますので、こう呼ばせていただきます。僕も、歳には負けず頑張りますが3人のお母さん方もこれからも足助病院で頑張ってください」とおっしゃった。
集まった職員は破顔一笑、その若さの真意とは、つまり、MIRAI、何事も自分の気持ち次第に尽きるという事だろう。