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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2020/05/26 

Vol.80  「あふれる栄養情報にご注意ください」

執筆 足助病院職員

栄養科 川瀨文哉

こんにちは。管理栄養士の川瀨です。

最近は食品による健康への機能性が注目されていますね。
テレビをつけると「体脂肪を減らす〇〇」や「〇〇に聞くと話題の~」などのフレーズを聞かない日はありません。もちろん食事は毎日するものですから、今の食事が将来の健康へ何らか影響を与えるはずです。
しかし、私個人は食品が薬のようにはたらくという表現には違和感を持っています。
そうはいっても、テレビでは実際の利用者の声や試した人たちの体重のグラフなどを示していて、なんとなく効きそうな印象を与えられますよね。

このような話題を考えるときに大事なことは「因果関係」と「相関関係」の違いです。
相関関係とはあるAとBの間に単なる関連があることを指し、たまたま出た関係性も含みます。
一方で因果関係では、AとBの間に原因と結果という関係性があることを指し、理論的に説明できる関係性を意味します。

ここではとある例をご紹介します。
2012年のニューイングランドジャーナルオブメディスンという世界で最も権威のある医学誌にチョコレートと認知機能に関する報告がなされました。
そこでは、チョコレート摂取量が多い国ほど、ノーベル賞受賞者が多いことが示されており、著者らは一人当たりチョコレートを年間400g多く消費すれば、ノーベル賞受賞者は1人増えるのではないかと考察していました。
確かに読むと国ごとのノーベル賞受賞者の数とチョコレートの消費量の関係は統計学的に強い関連性を示していました。

これだけ見るとチョコレートとノーベル賞には因果関係がありそうに見えますね。
しかしそのあと米国栄養学雑誌から反論の論文が出ました。その論文によるとノーベル賞受賞者の数にはIKEA(家具屋さんで長久手にもありますね)の店舗数も統計学的にチョコレートの消費量と同じくらい関連していると示されていました。
困りました。たぶんIKEAの店舗数を増やしてもノーベル賞受賞者は増えることにはつながりませんよね。

この論文ではGDP(国内総生産)が高いことがノーベル賞受賞者の数と関係しているのではないかと考察されています。
つまり、GDPが高く国が経済的に豊かな国では研究が発展しやすくノーベル賞受賞者もたくさん出るということで、これは因果関係として考えても良さそうです。
また一方で、チョコレートやIKEAの店舗数はおそらくたまたま出た関連であり相関関係として考えたほうが良さそうです。
栄養情報に限らず情報を読み取る際にはたまたま出た相関関係なのか、原因と結果を説明できる因果関係なのかをきちんと考慮できるといいですね。特に過大な広告にはくれぐれもご注意を!
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