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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2023/09/11 

Vol.422 「補聴器と沢庵」

執筆 院長 小林真哉

年齢を重ねるにつれ、見えや聴こえといったいわゆる五感は衰えてきます。
人によっては、第六感が研ぎ澄まされてより繊細になり、不眠になる方も居ます。  
本日は、この聴こえ・聴力についてのコラムとなります。
私の外来には元気で闊達な、健康寿命の長いご夫婦が多くみえます。
とはいえ、感覚器の鈍化は否めずご苦労されています。
或る日の診察現場での微笑ましい風景です。

私『・・な感じですので・・でやっていきましょう。熱中症、転倒に気を付けて』と検査の説明や薬の説明、生活指導をした折のことです。
患者さん『ん?で!院長先生! 今日は薬でるの?検査はいつするのか?』
私『へっ? ○○さん!聞いとった?』その患者さんの耳には高そうなイアホンが入っているではありませんか、勿論、音楽目的ではなく明らかに補聴器です。
私『あれー、補聴器の調子悪いの?』
患者さん『ああ、これね。スイッチ切っとったわ』
私『なんで? 意味無いじゃない。まあいいわ、もう一度言うよ・・・』
患者さん『院長先生、ごめんな。スイッチ切った理由がちゃんとあるんよ・・・』
私『なんね? どこか具合が悪かったんかいな?』
患者さん『んにゃ!!! おじいさんが沢庵をボリボリ食べる音がうるさくてスイッチ切ったんだわ!』
この返事には、私も隣にお座りになっている8020運動(80歳になっても自分の歯を20本あるようにしようという歯を大切にする運動)を地で行く頑固じい様を微笑ましく見つめ、お二人の日常を想像して思わず笑ってしまいました。

そもそも、補聴器は若いときのような聞こえ方を取り戻すというイメージがありますが、実はその人が今現在持つ“聞こえの力”を引き出す医療機器です。
そのためには、適切に調整された補聴器を使い衰えた聞き取る力を取り戻すことが必要です。
最新のAI補聴器などは機械が学習し、しばらく使っていくと同じような環境では自動でユーザーの好みに合わせた音を届けてくれるようになり、使えば使うほど聞きやすくなっていくように進歩しているようです。
更には、音が骨伝導で耳に届くことからの発想で、歯につける補聴器などが研究されているようです。

となると、じい様が難聴になって、歯装着型の補聴器を付けて沢庵を食べたら大変なことになるな・・・
と最後まで笑いが止まらぬコラム執筆となりました。

   

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