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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2024/03/14 

Vol.469 「ジグザグ立」

執筆 院長 小林真哉

前号のコラムでリハビリに触れましたが、今日は立つということについて考えてみます。
二足歩行の人間は立つ姿勢がとても大切です。
立ち姿の素敵な方は、雰囲気が違いますし、日本には古来より姿勢に関わる趣のある表現がいくつもあります。
例えば、石像のように立ちすくむ・案山子(かかし)みたいに立っている・化石のように立ちつくす・地蔵のように道にたたずむ・棒を呑んだみたいに突っ立っている・太い青竹のように立っている・彫刻のように突立っている
のような各々の表現は、その立ち姿や状況を想像することができます。

表題の“ジグザグ立”は、某番組で有名な狂言師が姿勢を褒められ、自らの立ち姿を表現していたものです。
能の姿勢は、頭頂から腰にかけて、身体の軸をしっかりと保ち、余計なところに力を入れず美しく立つのが、基本姿勢の「構え」だそうです。
更に、胸を張ると自然と背筋が伸びてまっすぐな姿になります。
軽く膝を曲げ、余計な力を入れない安定した立ち方でどんな動作にも移ることも戻ることもできる。
少し身体を前に傾け、直立よりもやや前に重心を置くことで力強い立ち姿勢となるようです。
特にお面で視野が狭められるので姿勢は大切だそうです。
今、触れたような体の様々な部位に意識を置いた立ち方を、真横からみると正にジグザグに見えるのです。

そういえば、今思い出しました、かつて友人とともに豊田の能楽堂に観劇に行った出来事を!いかにも、能がお好きそうな方々が観客として席を埋めている中、厳かな雰囲気で開演し、シテが静かに入場してきたときのことです。
開演してまだ10分程しか経っておりませんでしたが、私のおなかに差し込みが来たのです! ソロリ・ソロリ・ギュルリ・ギュルリと!
実は思い当たる節がありました、観劇前に食べたラーメンです。
基本、あっさりの塩ラーメンが好みでにんにくなど入れることはない私ですが、その日は連れ達の勢いに任せて、いわゆる二郎系ラーメンに挑戦してしまったのです。
半世紀を超えて付き合っている自らの胃腸のことは重々承知でしたが…開演前から微妙であり、残念ながら我がおなかはもちませんでした。
能の主役のシテ、顔負けのジグザグ姿勢で摺り足にてそろりそろりと会場を後にしたのでした。
座席が横並びの一番奥であったこともあり、なかなかの気まずい体験で戻る気力もなく、外のモニターで観劇する羽目になりました。
多分、完ぺきに近いジグザグ立をしていたことと思い、コラムを書きながら笑いがこみあげてくるのでした。

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