2024/07/29 Vol.505 「筆触(ひつしょく)に想う」 執筆 院長 小林真哉 以前のコラムVol.503 鉛筆削り で触れた鉛筆のくだりですが、ある程度の濃さで太さの芯のほうが漢字の書きの教育では入りや払い止めに重要だそうです。 そういった雅な話は、もっぱらコンピュータで文筆活動をしている私には少々、むず痒い話です。元来、筆のタッチにはその人の性格・その場の状況・健康状況などを推し量れる側面があります。 やる気満々の若かりしときの筆圧の強い時期や、壮年期の柔らかなタッチ、老年期に入りやや弱い筆圧で少々にじむラインなどそれぞれの世代によっても特徴があります。 手書きの年賀状をやり取りが主流の時代には、相手方の変化が垣間見られました。 近年では、スマートホンを代表にタッチパネルが使われ、指で思い通りの操作ができます。 更に細かい文字や絵を描く場合はタッチペンを使い、会議等においては、電子署名、デジタル手書きなど、タッチペンとタッチモニターを組み合わせます。 タッチパネルも感圧式(駐車場の決済タッチモニターのような屋外用機器、車載ナビ)は、圧力を感知するため、表面を軽くタッチしても反応しませんが、スマートホンなどはすべて静電容量式タッチなので触れるだけで反応しますが、かつてスマートホンに慣れない方が、画面を触れるのではなく押していた光景をほほえましく思い出します。 実際、スマホ・タブレットを使用した当院での遠隔診療の実証実験では特有の用語・操作【タップ:指先を画面の上で1回叩くこと・ダブルタップ:指先を画面の上で素早く2回叩くこと・ドラッグ:指先を画面の上で長押ししたまま移動させること・フリック:指先を画面の上で素早く弾くように払うこと・スワイプ:指先を画面の上でスライドさせること】などを、モニター越しでは、意味が分からない、手先がついていかないこともあり頻繁に通信が切れる(電波が悪いわけではありませんが…)事態があり、結局、患者さん宅へ職員を派遣しての遠隔診療などの笑い話も懐かしいです。 先日、50年ぶりに私の講演会で小学校の担任の先生にお会いしました。 後に届いた恩師からの手紙は達筆な自筆でした。 約半世紀前の小学校の配布物ガリ版を想い、懐かしい変わらぬ筆触に心が波立ちました。私もいつの日か、当地域の先輩方が実践している手で素材に触れて道具を使いじっくりものと向き合い手仕事を愉しみながら日々を過ごす時が来ると思います。 それまでは今しばらく、パソコン・スマートホンに依存した日々を過ごすことになりそうです。