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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2024/08/08 

Vol.508 「に・え・か」

執筆 院長 小林真哉

何とも暑い夏を過ごしている日々ですが、皆様、十二分に水分・休養・睡眠・栄養をとり熱中症に留意してください。
そんな折、ある農協関連の方に聞きなれないフレーズを教えていただきました。

来客『院長先生!今年も猛暑ですね。しかし、年々暑くなりますね。』
私 『農業関係者の熱中症に留意してくださいね。作業時間の短縮は難しいでしょうが、時間帯の工夫・水分摂取・体調管理等の啓発をお願いします』
来客『そうですね。組合員の方に周知します』
私 『先日、日本農業新聞で掲載していただいた熱中症対策の私の記事も、足助病院のホームページで読めるようにしてありますのでご利用ください』
来客『ありがとうございます。農業の世界では、この暑さの影響はヒトだけではないんですよ。院長先生、に・え・か ってご存じですか?』
私 『初耳ですね。どんな字を書くのですか?』

表題の〝に・え・か〟ですが、漢字でかくと〝煮え果〟です。
耳になじんでいるのは、元来、冬に備えるための保存食が由来の、さまざまな果物をシロップで煮て作るコンポートですが、調理方法や、料理名ではありません。
今回は美味しいデザートのお話ではなく、農家さんを悩ましている気候・高温による桃やなしなどの果肉がジュクジュク、変色してしまう被害のことです。
果実をむいた後に、暑いところの放置してしまった経験があるでしょうか?
そのような時の果実の変化が、収穫前に起きてしまう事象のことです。

豊田市はこの時期、桃や梨など様々な美味しい果物が多く栽培されていますが、これらを襲う農作物の気象病ともいうものです。
桃の場合は,地域によって様々な呼称 があり、「あん入り症」、「煮え果」などと呼ばれ、収穫直前に果肉の一部が水浸状となるため「みつ症」とも呼ばれるそうで、時間が経つとその部位が褐色に変わってしい商品価値が下がってしまうそうです。
この障害の正式名称を「水浸状果肉褐変症」といいますが、なんだか我々の医療の世界のような重々しい名称です。

大玉で果肉が軟らかく、糖度の高い熟度の進んだ高品質な果実に被害が発生しやすく、近年は「完熟」で収穫することが多いため、収穫が適期より遅れると発生が急激に増加し、農家の方々は神経を使います。
最近、報道で〝今までに経験したことのない〟のフレーズがよく使われます。
〝今までに経験したことのない〟暑さの影響は作物にも及んでいるのです。

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