2024/09/12 Vol.516 「茜雲」 執筆 院長 小林真哉 台風10号の去った朝の東の空は茜色の雲が覆っていました。 とても素敵な空模様は、お伝えする表現の仕方が大切です。 色の世界では「こい赤色」とでも表現するのだと思いますが、日本語は雅です。茜色(あかねいろ)とは、平安時代から用いられた伝統色名で茜草の根で染めたやや黄色みのある鮮やかな赤色のことです。 その茜色の抽出に、日本では古来、日本茜という植物の根を使ってきました。 世界的に見ても藍とともに人類最古の染料です。 インダス文明の遺跡から出土の「茜染めの木綿」が最も古い茜染めとして知られています。 日本茜はアカネ科の多年草の蔓草で、根は髭状に伸び、一年目のものは黄褐色ですが、二年目から赤の色素を持つようになります。 本州、四国、九州などの山野に自生するアカネ科の蔓性多年草で、黄赤色の太い根が、古くから赤(茜色)の染料として利用されてきました。 漢方の世界では止血剤としても有名です。 少々、雅なお話の流れになりましたので和歌の話などいかがでしょうか? 「あかねさす紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖ふる」 万葉集に収められている額田王と大海人皇子の有名な相聞歌です。 意訳は、〝あかね色をおびる、紫草の野を行き、その禁じられた野を行きながら、野の番人は見るのではないでしょうか。あなたが袖をお振りになるのを〟と互いを想いながらも戸惑いを表す和歌の傑作です。 あかねはこの時代にも出てくるぐらいに、昔から使われてきた言葉・色味なのです。 足助病院にも2013年から縁が深い趣のある色の話があります。 当院の外壁の至極色(コラムVol.499 紫式部 参照 )は紫根から抽出された色味に由来しています。10年の年月を経て、外壁も風格が出てきました。 そういえば、ビール好きの諸氏はもうすでに見かけて、手中に収めているのでしょうか? S社の期間限定ビール 茜色エールを!ホームページには 「パッケージは、茜色に染まる空をモチーフに、秋の清々しい空気と心地良さをイメージした彩り豊かなデザインに仕上げました」とあります。 素敵なデザインで、茜雲をほうふつとさせます。 是非、お探しあれ!