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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2025/03/24 

Vol.562 「映画赤ひげ考」

執筆 院長 小林真哉

何とも物事には縁というものがあります。
昨年秋の内定通知、1月8日の公式発表、メディア取材、2月21日の明治記念館での授賞式・レセプション等々で赤ひげ関連の事案にまみれ、
山本周五郎著の『赤ひげ診療譚』も読み直した私です。
そんな折の3月の休日の昼のことです。何気なくつけたTVでモノクロの味のある映画を上映していました。
黒澤明監督の映画作品特集です。となると…

偶然の賜物ではあったのですが、若かりし加山雄三さんを見た瞬間に『あっ!赤ひげだ!登だ!』とわかりました。
三船敏郎さん演じる〝赤ひげ〟こと新出去定、加山雄三さん演じる青年医師保本登、二木てるみさん演じるおとよ、
山崎努さん演じる佐八、笠智衆さん、東野英次郎さん、菅井きんさん、野村昭子さん、西村晃さん…名優ばかりです。
映画『赤ひげ』1965年4月3日に公開された黒澤明監督の東宝映画作品で途中に休憩をはさむ3時間余の大作です。

原作は山本周五郎の赤ひげ診療譚ですが、黒澤監督の素敵なシナリオで脚色された江戸時代の小石川養生所を舞台とした庶民の生活と赤ひげとの青年医師の心の交流が名優たちの卓越した演技と絶妙なカメラアングルで丁寧に描かれています。
映画の中での赤ひげは『病気の陰にはいつも人間の恐ろしい不幸が隠れている。その隠れている不幸をも察して診続ける。
その事に対して人として、医術者として何が出来るのかを考え実践していく事が我々に課せられた使命であるのだ』と言っています。
青年医師保本登は赤ひげを通して単なる医術知識だけでは無い生きた本当の医療の意味と人間性に根ざした医療とは何かという不変の医療の本質を学び成長していくのです。

小石川養生所に入る保本登の後姿で物語が始まり、赤ひげに随って小石川養生所に入って行く後姿で終わる場面を見て
『青年医師の登の成長に象徴される医療人としての成長が大きなテーマ』となのだと我ながら得心しました。

それから60年後の2025年2月21日赤ひげ大賞授賞式では医学部生の質問に対して、足助の赤ひげこと早川先生は言っていました。
『私はかつての恩師に言われた3つの言葉を大切にしています。それは、学と技と恕(ジョ)です。でも、長い間医師をやっていて思います。この3つの中で、最も大切で育てなくてはならないものは恕なのだ』と! 
そう医療の本質は何も変わっていないのです!

※「恕(ジョ)」他人の立場や心情を察すること、その気持ち、 思いやり。
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