或る日の外来での出来事です。
80代後半の可愛いおじいさまと80代半ばのお姉さまのカップルで、定期的に私の外来を受診してくれています。
幸いお二人ともお元気で、ご本人は『私は後ろを向かない、100迄は生きるのでよろしくお願いします』ととても前向きです。
奥様も、飄々と穏やかにいつも微笑んでいます。
定型の診察後は、外来の大部分は御仁の身の上話で構成されます。
御仁『今日は○○について聞きに来ました。 院長先生!』
私 『承りましたが…今日、もうすでに3回お伝えしましたが・・・』
御仁『アハハ、最近物忘れが多くて…』
妻 『アハハ、いつもですよ‥ 慣れました…もう70年近いですから…』
御仁『私はね、昔、□□で頑張っていたんですよ‥ちょっといいですか?』
私 『そうですよね…かれこれ30回は聴いていますよ…ところで、お二人で生活されていて、大きなお家のお掃除とかは大丈夫ですか?』
妻 『大体は私ができますし、高いところとかは近所の人が手伝ってくれますから大丈夫ですよ。 主人は何もしませんが…』
御仁『いやいや、ハウスクリーニングを定期的に頼んでいるじゃないか!』
私 『えーっ。そうなんですか。結構、お金がかかるんじゃないですか?』
御仁『いやー、 それが格安なんですよ…今時は‥‥』
私 『そんな素敵な仕組みがあるんですね…どんなところに頼んでいるの?』
御仁『えーっと、どこだったけ? 豊田厚生? 医療センターの近くの…』
私 『そんな場所にあるんですね~』
なんだか変なニュアンスが漂っているのを察知しましたが、
長~い付き合いですので辛抱強く会話を続けていたところ、奥様がおもむろに私の方を微笑み
『先生、すみません。長々とお話にお付き合いしていただいて…
主人の言っているのは足助病院から来ていただいている私の訪問看護のことですね!』
御仁『そうそう!それそれのことだ!』
私の脳裏には、定型の看護をした後に、
甲斐甲斐しくいろいろ手伝っている当院の訪問看護職員の姿が浮かびました。
私は、心の中でつぶやくのでした。
「☆☆さん!奥さんの場合1割負担なので訪問看護の自己負担は550円です。
お安く感じられますわね~ でも、それハウスクリーニングじゃないですよ!」
ほのぼのとした穏やかな風が漂う私の診察室の情景をお送りいたしました。