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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2020/11/19 

Vol.155  「鐘を鳴らす」

執筆 院長 小林真哉

警鐘を鳴らす。
「警鐘」とは「危険を知らせ、警戒を促す鐘」のことで、「良くない方向へと向かっていることを指摘する・警告する」という意味で使用されますね。

ここ数年は、毎年の風水害により尊い人命が失われています。政府機関・気象庁・防災関連・各種報道機関も最大限の危険を伝える様々な表現・方法を工夫しています。例えば「これまでに経験したことのないような大雨になる」です。

2019年10月の台風19号により長野市穂保にある千曲川の堤防が決壊したことで大きな浸水被害を受けた長野市北部の長沼・豊野両地区の住民避難状況を分析した報道で興味深い事案を目にしました。当時、千曲川の水位の状況は、詳細に観測されており頻繁に行政から避難指示が順次出されていました。それに応じて、住民の方が避難を始めるわけですが夕方から夜にかけての時間帯であったことと堤防に対する安心感から自宅で待機される人も多かったようです。

住民の方のインタビューにおいても、
「確かに、頻繁に繰り返し緊急情報が流れていたし、状況がひっ迫している旨であったのは自覚していた。しかし、頻繁に同じ情報が繰り返されることにより若干、〝慣れ〟が生じていた」とお話されていました。

確かに日常生活においても、このような経験は良くありますね。

そのような状況の中、ある時点を境に住民避難が加速されたそうです。
その時点を分析してみると地元の勇気ある消防団員達が地域各所の火の見櫓に登り5分間、半鐘を鳴らした時期を契機に避難活動が加速したことがわかりました。 
住民の方もインタビューで答えていました。
「普段聞きなれない鐘の音を聞いて、これは本当にマズイと避難開始の引き金になった」と。

リアル(現実)とバーチャル(仮想)が共存する現代社会で、リアルを認識・実感できるデバイス(道具・手段)は、新旧問わずいかに危機を回避する有用な物となることを知る報道番組でした。
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