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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2021/10/14 

Vol.239  「おひとりさま」

執筆 院長 小林真哉

上野千鶴子氏のベストセラー「おひとりさまの老後」は9年前に出版されました。
かつて施行した当院の診療圏住民に対するアンケート調査の栄養状態の結果からは、重点的にケアをすべき方々がお年を召しておひとりになられた殿方様ということが浮かび上がりました。
ご高齢の殿方の中には、奥様が居る時は正にお殿様扱いされ炊事・洗濯・掃除はほぼできない方々が多くみえます。そのような方々が不幸にして「おひとりさま」になった場合の摂取カロリー・栄養バランスは非常に厳しいものでした。
せめて、お米を炊けて具沢山のお味噌汁をつくれればと、栄養科・栄養サポートチーム・福祉関係者とプロジェクトを走らせたことを思い出しますし、その一環で始まり、楽しく好評を得ているのが〝男の料理教室〟です。
現在日本でいちばん多い世帯は、単身で暮らす「おひとりさま」で、65歳以上の単身世帯が増えています。
今は高齢女性のおひとり様が多いのですが、今後は男性も増えてきます。社会全体の問題として取り上げられるのは当然として、個々の問題として大切なのは、「自分で自分の身の回りのことができる」ことです。更には、孤立した状態を回避するために「助けを求めたり、支え合えたりする周囲との関係を維持できる」ことが大切です。草刈り・防災訓練等の地域活動などに気軽に参加することから始まるのかもしれません。

そのように変わりゆく社会状況を俯瞰していて、ふと思いました。
『終の住処を提供する医療を追求している我々は、「家族がいる」が前提で様々な事象に対応していないだろうか?
事あるごとに家族への連絡・同意を求めるシステムの元、運営しているのではないだろうか?』

我々のような診療圏の医療者こそが、〝身近な家族のいない高齢者に対応する仕組み〟取り組んでいかなければならないと考えさせられたコラムとなりました。
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