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足助病院コラム

Asuke Hospital column

2024/12/19 

Vol.540 「クライメートポジティブ」

執筆 院長 小林真哉

2024年夏季パリオリンピック・パラリンピックのスローガンとして掲げられたことでも注目を集めたのが「クライメート・ポジティブ」です。
「カーボンニュートラル」はよく耳にするフレーズで、二酸化炭素の排出量と吸収量が差し引きゼロの状態を指します。
「クライメート・ポジティブ」は更に高みを目指し、温室効果ガスの削減量を排出量よりも多くして地球環境にプラスの効果をもたらそうとする試みのことです。
産業構造の改変などでCO2排出量を抑えると共に、森林の保護・再生でCO2を積極的に吸収することで実現を目指しています。
国連の定義では『事業や商品生産における工程で排出するよりも多くのCO2を吸収・固定すると同時に、
パリ協定の「地球の平均気温上昇を1.5 ℃未満に抑えることを目指す」の目標に沿って排出量を削減を続けること』となっています。

我々、医療現場で働く者にもこの概念の理解と履行が求められる時代です。
なぜなら、保健医療システム自体から排出される二酸化炭素(CO₂)は、 CO₂排出全体の 約5%を占め、
温室効果ガスの主要な排出源となっているとされているからです。
世界に目を転じると、気象災害(熱波、豪雨、干ばつ、台風等)の頻度・強度が増し広範囲で長期間の衛生環境の悪化が頻発しています。
いわゆる気候難民(気候変動による異常気象の影響を受け、現在住んでいる場所から避難しなくてはいけないと言われている人々)が増加し2050年には数億人になるとされています。
そして我々も、日々の臨床において、熱中症をはじめ気候に関わる疾患の増加や様々な感染症の増加を実感しています。
一人でできることは限られますが、一人一人が意識して積み上げることで未来に繋がるのだと思います。

日常生活でも地産地消で旬のものを美味しくいただくことも実は、地球環境にやさしいのです。
つまり、生産から輸送、貯蔵に至るまで二酸化炭素の排出量が少ない食品(つまり気候変動につながりにくい食品)を選んで食べるとCO2産出を低減するのです。
このような生活スタイルを積極的に実践している人を〝クライマタリアン〟(気候を意味するclimateとベジタリアンなど食習慣を意味する言葉の合成語)と呼びます。
焼肉好きの諸氏の方々!お肉なども牛さんではなくげっぷをしない豚さん、鶏さんが環境にやさしいこともお忘れなく
(参:コラムVol.228 牛さんのげっぷによるメタンガス問題)

※クライメート(Climate):気候
※参考:日本医療政策機構〝保健医療分野における気候変動国家戦略〟
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